観劇ブログ(雑記ちゃん)

かなり個人の見解です!

2023年後半の観劇を振り返る(2023/11)

最近見た公演の感想をつらつらとメモです。

 

 

■11月 ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』

→帝劇超良席当選で観劇。イープラス前方席確約先行とはいえ、チケット代は諸々含めて17,320円!個人的にまかたん初舞台へのご祝儀と思ってるので当然と受け止めているけど、普通の演劇なら2回見れちゃう値段。はたして価格相応のものは見れたのかというと…。観た回はまかたん、立石回です。

・ざっくりあらすじ

テンプル騎士団の聖堂で施療院を作る計画の会見で、テンプル騎士団研究会会長・ボーマニャン(黒羽麻璃央/立石俊樹Wキャスト)とデティーグ男爵令嬢クラリス(真彩希帆)、考古学者に扮した怪盗紳士アルセーヌ・ルパン(古川雄大)と出会う。騎士団に伝わる燭台の7本の枝=騎士団の莫大な隠し財宝を求めた戦いに、偽ルパンリオストロ伯爵夫人(柚希礼音/真風涼帆 Wキャスト)、ルパンの自称ライバルだが薬中名探偵シャーロック・ホームズ(小西遼生)、ルパンマニアのかわいい高校生名探偵イジドール・ボートルレ(加藤清史郎)、お馴染みガニマール警部(勝矢)が参戦。ルパンとクラリスの恋と財宝の行方は…?

・感想(フォロー版)

わかりやすいストーリー。各人に見せ場が多く、アンサンブルまでセリフや出番がある。まるで宝塚の公演、だと思えばこれほど軽妙で楽しい舞台はないと思う。ゆんをトップスターとした公演という設定で造っていると思えばもう全然納得できる内容。正統派の怪盗姿も、タキシードも女装もシャツ一枚でも綺麗な男ゆんの七変化と踊りは大いにファンを楽しませ、二番手まかたん(とちえさん)のありがたすぎる男装や素敵なドレス姿がとても尊ばれる扱いをされていることにも満足した。イケコはスターの格がきちんとわかっており、要は期待していたことに関してはありがたいほどの展開だったのだ。きほちゃんは最強に歌が上手く、まかたんとってもかっこよくて周りに自慢したいほどのヅカOGらしさを堪能。まかたんがゴージャスすぎて只の女優エンドも、次は女優って設定にしようかな?って思ってる貴人ぽさもあるほどにやはり只の人じゃない、、これは本当に稀有なカリスマ性だなと。そして久々見た加藤清史郎めちゃくちゃ上手かった。あれだけ走り回って歌も芝居もチャーミングでお見事!音楽のアチア感はあまりわからなかった。

・本音

…イケコ、これでいいのか?スター芝居がヅカ以外でもできるということはわかった。わかったけど日本最高水準の舞台であろう外部「エリザベート」「1789」を輩出してきた演出家のオリジナルといえば、多分ゆんファンやヅカオタ以外の客もたくさん買ってきてくれたと思う。かくいう私の友人もその一人だったが(ヅカは一切見ていないが帝劇には中々の頻度で通っているファン層)感想は「思ったよりギャグ?テイストが強くて、内輪ネタなのか本気なのかよくわからないシーンが多かった。あと想定より舞台美術や装置が少なかった」との意見だった。ヅカでは固定ファンが多くて許されるネタ込みの展開も、今年ムーランルージュ等を通ってきたような一般の観客には少々がっかりした部分もあった模様。ゴンドラいるかな…閉口してしまうような歌詞…。ヅカ版ロミジュリやポーの一族のように素晴らしい作品を作り上げる一方、ネバセイはともかく、この前ボンドというロングコントのようなオリジナルを作り(あれを海外配信させてしまおうとするような劇団方針も含めて)出す人でもあるというのはヅカでは周知のことで…。

そして立石ボーマニャンは若手俳優起用にしては硬派過ぎたな(勿論下手というわけではなく、むしろ手堅くて良かった)。こにたんがやるような役になっちゃってた。結局ラスボスでもないことを踏まえて、イケコ作品にミスリードを誘う仕掛けはないのでヅカっぽい悪役に振り切った方が良かったような。もう少し愛嬌がないと後半の展開との温度差が乖離して…何せ枝がそろったあたりからえらく雑な展開になるわけだし…。この辺こにたんホームズは上手かった。

イケコ…最高峰のスタッフやキャストを集められる力とファンがいるわけだから、諸事情に負けてるキャスティング問題(何故歌の下手な人や初舞台みたいな人を大作で起用するの?)も含めて再度良質の方向性をそろそろ示してもいいのでは?(ただそのあたりをうまいバランスでやってるから今のたか~い位置なのも理解する)とりあえず解決方法は一つ、ルパン(各所マイルドにして)ヅカでやりません?

 

 

■11月 月組公演 ミュージカル『フリューゲル -君がくれた翼-』作・演出/齋藤 吉正

→配信一回、観劇一回。サイトーオリジナルにしてはすっきりした作品。

そんな都合のいいことはないだろ…とか、なんで協力者(子飼いのスパイか?)がいるんだよ…とかもうそういうのは一切置いといて、硬派で素敵な月城かなとと久々明るい魅力のクラゲが邂逅して歩き出すという物語になってるんだからもう文句はないんですよ。ロマ劇もGBも応天も(別箱に至るまで)ちゃんと人間同士がハッピーエンドになってないじゃないですか。二人がはじめから夫婦だった作品も観てみたいぐらいお似合いなのにね?それでやっとここにきて、明るい結末で満足感がある。もうそこに価値があるからこの作品はそれだけでいいんです。桃歌雪さんという方が大活躍なので覚えました。

 

東京詞華集(トウキョウアンソロジー)『万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)』作・演出/栗田 優香

→天才、大劇に爆誕。近年見たショーの中で最も高いクオリティー。カルトワインから思ってたけど、間違いなくヅカを背負う方です、栗田先生は。同じく天才指田先生が性悪説ベースだとすると、栗田先生は性善説ベース(どちらも美しい極地を描くのがうまいからそこに優劣は一切ないです)人間の持つ力を信じているんだよね…。

・勝手な解釈ベースでの感想と考察

もう非常に自分勝手な解釈を並べ立てますから、悪しからず。今作はれいこ&クラゲ&ちなつは通し役で物語調にショーが進みます。これまたBADDYを思い出す面白さでパレードまで…。

万華鏡には不思議な魔力がある。出会いは江戸の貧乏な花火師(れいこ)と花魁(クラゲ)。結ばれない理由は金銭問題と身分。想い合っていた二人は足抜けし、斬られて別れます。そんな二人を見ていたのは花火師が花魁に渡した花火代わりの万華鏡(ちなつ)でした。ものに思いが宿って付喪神になる、そうしてここから何世紀も万華鏡付喪神が二人の人生の交点を見ていくことになります。

ゆのくんのソロから、一度目の来世の舞台では明治の鹿鳴館。二人とも裕福になって念願の花火をともに見ることができたけれど、生まれの違い(人種、国籍)がまた引き裂きます。つなぎのあみちゃんと老齢になったクラゲの会話から大正の銀座煉瓦(ショーウィンドーのマネキンがかわいい)へ、比較として所謂普通の幸福なカップルの姿が描かれます。そしてカフェーでは時獄変執筆の芥川と邂逅(付喪神)欲深い情念と憎悪と後悔の炎が焼き尽くす様が皮肉にも空襲の炎とリンクし、次の未来では昭和の闇市です。前ほど裕福ではなくなりますが生まれの違いは解消してもなお今度は育ってきた境遇の差が(これを示す、こうでありたかった純白の二人のダンスが切ない)またも二人を阻みます。

平成時代の中詰で明らかにテイストが変わり、明るいロケットで何かが変わった予感がして盛り上がった後、サチモスでの楽しくて自由なダンスを経て、令和の渋谷にKing Gnuの曲と共に降り立ちます。

疲れた人間たちが満員電車から雨の降りしきる渋谷のスクランブル交差点(これを大階段…!)へ放出され、それぞれの未来に向けて歩きます。傘の色も効果的に使い様々な人の芝居に目が足りないシーン!傘を持ってない子が差した人に出会って入れたもらえた時の安心感たるや…。遂にカラスと人間という出会いの中でどうにか傘を阻止してクラゲを助けたいれいこちゃんの苦しい気持ちがダンスに乗ってなぜかわからないけど涙がこぼれるシーン…。

万華鏡付喪神は二人には何の作用もできませんが、万華鏡を手に取る人は選べます。現代で選ばれたかわいい少女(謂わば審神者?)は、万華鏡を覗いて「綺麗!」と。見る人によって形を変える万華鏡の醍醐味、現代の女の子にはこれまで花火師と花魁が惹かれあってきた歴史も含め見えているものは綺麗なのです、何故なら令和の少女である我々には国籍も金銭も身分も愛の前には大した障害ではないのは勿論、そもそも東京で時代を追うごとに人間の価値観はアップデートされてあれほど2人を苦しめた大半の問題が消滅し、残ったものすらも多様性が尊ばれる今、大した問題でもなくなっているんですから…。そういう現代の人間の目=価値観を通してやっと結ばれた二人はハッピーエンド、絶景の中付喪神も浮かばれて銀座へ。銀座の通りを抜けるとそう東京宝塚劇場、江戸の悲恋は令和のデュエダン(勿論花火付き)で成就です!!!

・総評

内容が天才すぎ。どうか再演してほしい。

転生ものが流行りまくったコロナ禍後でキャッチーにこのテーマをぶつけてきた栗田先生のスピード感は素晴らしいとしか言いようがない。ただ、高齢の方には転生という概念がわからなかったみたいでアンソロジーをそのままぶつ切りだと受け取ったみたいな人の感想もちらほら…あれほど有名な地獄変を読んだことのない人もいるし、こういう知らないとかわからない人に配慮しなくてももう良いんじゃないかと思う次第。何故なら栗田先生の作品には、そういうわからなかった人へのでも何か得るものありましたよね?って手を差し伸べてくれる優しさがあるように思います。この暖かさがbaddyの時より賛否両論にならなかった要因でもあるのかなと。とりあえず良い作品をありがとうございます!