観劇ブログ(雑記ちゃん)

かなり個人の見解です!

2023年後半の観劇を振り返る(2023/12)

 

最近見た公演の感想をつらつらとメモです。

■12月 花組公演 ミュージカル・プレイ『激情』-ホセとカルメン- 脚本/柴田 侑宏 演出・振付/謝 珠栄

→グリーンホールで観劇。ひとこちゃんの堂々たる全国ツアー。助手は樫畑先生。

何度も再演している激情は四回目の世界。有村先生の手掛ける軍服が青からキャメルに変わりました。ひとこちゃん、歌芝居ダンスどれをとっても安定していて素晴らしい。闇を覗き込む暗い目の役は、ドン・ジュアンでも冬霞でもはまり役。ナウオンでも言っていたけど自分の生き方とは何かをわかっていない焦燥感、自由と抑制のはざまでもがくさまが見事でした。こういう風に身勝手に嵐のように生きたいけど結局社会の中では異分子なのでこれは物語の中だけにしておきましょうという構造なのもヅカ的にぴったり。カチャのメリメは安定感が半端ないです。ガルシアもいいけどやっぱりメリメ。スーツの着こなしも真摯で小説家の佇まいがピタリとはまる。

星空さんは事前の心配よりもうまくスカートをさばいて良かった。カルメン、すごく娘役として難役だと思う。どう演じても娘役の枷はあるし、逆にやり過ぎてもヅカでやってる意味がなくなるし、かといってやりきらないと子供っぽいわがままな女に成り下がってしまう…。お若い年次でこれほどやれれば誰も文句ないと思います。(そう思うとやはり初演のお花様の品の良さは生まれながら…?どうやったらあの流れで気品とのバランス感保てるの?すごすぎる)

エスカミリオのあかちゃん、春の祭りでの登場シーンから痺れた。スターの風格と立ち姿。かっこよくて自信があって、それでいてやっぱり良い意味で賢しい。あかちゃんの持ち味としては思いやりがあるとか賢いイメージがどの役にもにじみ出ていて、それがこの学年にもなると一種の個性として受け取るのが楽しい。エスカミリオが酒場で出し抜いてそれを伏せておくのも賢いし、恋の歌もそれがあるからシンプルに明るくてかわいい。闘牛場での赤い布を掴むカルメンとの姿はまるで絵画。しかしそれを上回るひとあかのダンスシーン…皆双眼鏡あげたよね!???(舞台写真も勿論買った)

本題です。咲乃深音ちゃんの話です。ミカエラ大抜擢でしたが、あの歌を歌いこなせるのは現状深音ちゃんがどう見ても適任でしょう(ほかの組の路線外だったらきららうみちゃんやありすひめかちゃんでしょうね)ホセ・メリメ・カルメン・ミカエラのカルテットはこの作品の重要なクライマックスでした。

またしてもひとこちゃんに手ひどく扱われる女役の深音ちゃん、健気で信心深くて彼の行く末をどこまでも案じている姿にフィレンツェでのマチルダ役がよぎります。ミカエラは婚約者として彼の母の面倒を見ながら故郷で暮らし、セビリアの祭りの喧騒の中バスケットにりんごをもってホセのもとを訪れます。真逆の生き方のカルメンと出会ってホセの心はますますミカエラから離れますが、優しい歌声に反し、意外と行動派ミカエラはあきらめません。つっかかってくる軍人にも毅然とした対応。様々に彼の事を追いかけ、母の事を任す使用人ぐらいの扱いをされ、看取ったことを告げても悲しみに暮れるだけの身勝手なホセ…に、も、かかわらずまだ彼の生き方を案じて思い続けるミカエラ…。もう信じられない扱い。こちらはキレそうですがどこまでもどうしようもないホセを本気で心配している聖母のような存在としてしっかりと深音ちゃんが君臨していてこその作品でした。まなざしや声色に恋を超えた愛がのってるんですよ…深音ちゃんミカエラの芝居には…!

 

 

ネオ・ロマンチック・レビュー『GRAND MIRAGE!』作・演出/岡田 敬二

→助手は雑賀先生。大劇版との違いは、カチャが二番手に入っていることによる場面追加ぐらい。カラーは大きく変わらず。

・OP ロマンチック乙女始まりは人が減ってたけど非常にヅカらしくてわくわくします。

・果てしなきミラージュ あかちゃん、ほってぃ、はなこ、だいやになったとき衣装の色がそろっていて綺麗。

・遥かなるミラージュ ここはさすがにカレー&まどかの巧さを思い起こしました。ミラージュの乙女は花娘ならではの品のある佇まい…深音ちゃんの笑顔がかわいい。

・VIVAカンツォーネ! あかちゃんの髪形が大劇と変わっててオペラを下げることができませんでした、なんだあの若返った前髪は…??イケメン過ぎる…。相手は長身美女の美里玲菜さん。美男美女で眼福…!

・シボネー ひとこちゃんのバージョンもミステリアスで良いです!あかちゃんの相手はまたしても美里玲菜さん。

・GOLDEN DAYS(新) カチャ真骨頂。ロマンチックレビューの継承者カチャの王子様を堪能。下級生は勉強になったことでしょう…あと淑女の深音ちゃんの可憐さが楽しめる。

ボレロ あかちゃんの相手は琴美くららさん。リフトが持ち上げやすそうだった。

・ラ・ノスタルジー(新) カチャ真骨頂2。下級生は勉強になったことでしょう…。

・フィナーレ ソー・イン・ラブを熱く歌うあかちゃんのを泣きながら見ていたのでひとみさの記憶が一切ありません。3/12にブルーレイが出たら確認します。

・エトワール 咲乃深音ちゃん大大大優勝ありがとうございました。

 

 

■12月 SORA KAZUKI Christmas Special Dinner Show『Vie.』

→あっという間に雪のムラ千秋楽を終え、DSを配信で視聴。

かわいくて清楚な華純沙那ちゃんと、フレッシュすぎる(いろいろな意味で)咲城けいくんというダンサー二人を従えての素晴らしいDS…。

トークも思いのほか長くて(笑い)見ごたえのある内容でした…歌詞に野口君の愛情も感じ、素晴らしいスター和希そらを惜しむばかり…。

 

 

■12月 『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』

→毎年のことながら内容が書けない…笑 昨年と違って非常にノーマル(?)な内容。

多分路線若手(ヅカ的な言い方)石川りょうがくんのおかげでシリアスなパートが保たれたからかなと思います、、りょうがくん(とりょうがくんファンの皆様)お疲れ様でした。キラキラ現場に戻って大成してもるひまのことを忘れないでください。

とにかく歌が上手いメンバーを集めまくって、主役には爽やかな風が吹き荒れているような美しくて甘い顔面の相葉!よくぞお戻りに…!(何で戻ってきたというのが本音)

支える内藤くんはお馴染みの歌うまで、上口さんはるちゃんの歌うまにも大ナンバーも用意され、大満足。

井澤ゆ~きは何でも安定してて良いし、伊藤さんはもう外せないキャストの一人(今年も光る靴はいてほしかった)。器用な井澤たくまはもっといろいろできそうな余地がある。広井君キゾクブルーかなりふりきれててかわいかった。かっちヒロインを観れるのは年末の健康に良い。前川は今回の役良かった。辻ちゃん、松田岳結婚おめでとう。加藤、まさし来年も会いたい。水さん今年も本当にありがとうございました。ROLLYさん大活躍でしたね。

原田くん(ジャスミンティー)は最早先生の域?前回の群像劇も超面白かったけどスター芝居を作るのも上手いとは…。

そして二部「猿楽の日1338~近頃都で流行るものフェスティバル」、今年はMCが鯨ちゃん。これを見ないと年越しできない!!!版権の関係上ノーコメントですが、唯一書けるTHE ZEN 『JI-AI』はほんとに意味が分からなくてこれもありだなと思いました。来年も有休取って観ます!毎年思うけど、同じような時期に明治座で長時間ふざけて泣いて食べてあらゆる角度でエンタメを楽しめるいわば年中行事みたいな公演って他にあまりないのではないかな?満席御礼とは言えない世の中ですけど、こういう企画が長く続いていることがうれしくありがたく思います!

 

 

2023年後半の観劇を振り返る(2023/11)

最近見た公演の感想をつらつらとメモです。

 

 

■11月 ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』

→帝劇超良席当選で観劇。イープラス前方席確約先行とはいえ、チケット代は諸々含めて17,320円!個人的にまかたん初舞台へのご祝儀と思ってるので当然と受け止めているけど、普通の演劇なら2回見れちゃう値段。はたして価格相応のものは見れたのかというと…。観た回はまかたん、立石回です。

・ざっくりあらすじ

テンプル騎士団の聖堂で施療院を作る計画の会見で、テンプル騎士団研究会会長・ボーマニャン(黒羽麻璃央/立石俊樹Wキャスト)とデティーグ男爵令嬢クラリス(真彩希帆)、考古学者に扮した怪盗紳士アルセーヌ・ルパン(古川雄大)と出会う。騎士団に伝わる燭台の7本の枝=騎士団の莫大な隠し財宝を求めた戦いに、偽ルパンリオストロ伯爵夫人(柚希礼音/真風涼帆 Wキャスト)、ルパンの自称ライバルだが薬中名探偵シャーロック・ホームズ(小西遼生)、ルパンマニアのかわいい高校生名探偵イジドール・ボートルレ(加藤清史郎)、お馴染みガニマール警部(勝矢)が参戦。ルパンとクラリスの恋と財宝の行方は…?

・感想(フォロー版)

わかりやすいストーリー。各人に見せ場が多く、アンサンブルまでセリフや出番がある。まるで宝塚の公演、だと思えばこれほど軽妙で楽しい舞台はないと思う。ゆんをトップスターとした公演という設定で造っていると思えばもう全然納得できる内容。正統派の怪盗姿も、タキシードも女装もシャツ一枚でも綺麗な男ゆんの七変化と踊りは大いにファンを楽しませ、二番手まかたん(とちえさん)のありがたすぎる男装や素敵なドレス姿がとても尊ばれる扱いをされていることにも満足した。イケコはスターの格がきちんとわかっており、要は期待していたことに関してはありがたいほどの展開だったのだ。きほちゃんは最強に歌が上手く、まかたんとってもかっこよくて周りに自慢したいほどのヅカOGらしさを堪能。まかたんがゴージャスすぎて只の女優エンドも、次は女優って設定にしようかな?って思ってる貴人ぽさもあるほどにやはり只の人じゃない、、これは本当に稀有なカリスマ性だなと。そして久々見た加藤清史郎めちゃくちゃ上手かった。あれだけ走り回って歌も芝居もチャーミングでお見事!音楽のアチア感はあまりわからなかった。

・本音

…イケコ、これでいいのか?スター芝居がヅカ以外でもできるということはわかった。わかったけど日本最高水準の舞台であろう外部「エリザベート」「1789」を輩出してきた演出家のオリジナルといえば、多分ゆんファンやヅカオタ以外の客もたくさん買ってきてくれたと思う。かくいう私の友人もその一人だったが(ヅカは一切見ていないが帝劇には中々の頻度で通っているファン層)感想は「思ったよりギャグ?テイストが強くて、内輪ネタなのか本気なのかよくわからないシーンが多かった。あと想定より舞台美術や装置が少なかった」との意見だった。ヅカでは固定ファンが多くて許されるネタ込みの展開も、今年ムーランルージュ等を通ってきたような一般の観客には少々がっかりした部分もあった模様。ゴンドラいるかな…閉口してしまうような歌詞…。ヅカ版ロミジュリやポーの一族のように素晴らしい作品を作り上げる一方、ネバセイはともかく、この前ボンドというロングコントのようなオリジナルを作り(あれを海外配信させてしまおうとするような劇団方針も含めて)出す人でもあるというのはヅカでは周知のことで…。

そして立石ボーマニャンは若手俳優起用にしては硬派過ぎたな(勿論下手というわけではなく、むしろ手堅くて良かった)。こにたんがやるような役になっちゃってた。結局ラスボスでもないことを踏まえて、イケコ作品にミスリードを誘う仕掛けはないのでヅカっぽい悪役に振り切った方が良かったような。もう少し愛嬌がないと後半の展開との温度差が乖離して…何せ枝がそろったあたりからえらく雑な展開になるわけだし…。この辺こにたんホームズは上手かった。

イケコ…最高峰のスタッフやキャストを集められる力とファンがいるわけだから、諸事情に負けてるキャスティング問題(何故歌の下手な人や初舞台みたいな人を大作で起用するの?)も含めて再度良質の方向性をそろそろ示してもいいのでは?(ただそのあたりをうまいバランスでやってるから今のたか~い位置なのも理解する)とりあえず解決方法は一つ、ルパン(各所マイルドにして)ヅカでやりません?

 

 

■11月 月組公演 ミュージカル『フリューゲル -君がくれた翼-』作・演出/齋藤 吉正

→配信一回、観劇一回。サイトーオリジナルにしてはすっきりした作品。

そんな都合のいいことはないだろ…とか、なんで協力者(子飼いのスパイか?)がいるんだよ…とかもうそういうのは一切置いといて、硬派で素敵な月城かなとと久々明るい魅力のクラゲが邂逅して歩き出すという物語になってるんだからもう文句はないんですよ。ロマ劇もGBも応天も(別箱に至るまで)ちゃんと人間同士がハッピーエンドになってないじゃないですか。二人がはじめから夫婦だった作品も観てみたいぐらいお似合いなのにね?それでやっとここにきて、明るい結末で満足感がある。もうそこに価値があるからこの作品はそれだけでいいんです。桃歌雪さんという方が大活躍なので覚えました。

 

東京詞華集(トウキョウアンソロジー)『万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)』作・演出/栗田 優香

→天才、大劇に爆誕。近年見たショーの中で最も高いクオリティー。カルトワインから思ってたけど、間違いなくヅカを背負う方です、栗田先生は。同じく天才指田先生が性悪説ベースだとすると、栗田先生は性善説ベース(どちらも美しい極地を描くのがうまいからそこに優劣は一切ないです)人間の持つ力を信じているんだよね…。

・勝手な解釈ベースでの感想と考察

もう非常に自分勝手な解釈を並べ立てますから、悪しからず。今作はれいこ&クラゲ&ちなつは通し役で物語調にショーが進みます。これまたBADDYを思い出す面白さでパレードまで…。

万華鏡には不思議な魔力がある。出会いは江戸の貧乏な花火師(れいこ)と花魁(クラゲ)。結ばれない理由は金銭問題と身分。想い合っていた二人は足抜けし、斬られて別れます。そんな二人を見ていたのは花火師が花魁に渡した花火代わりの万華鏡(ちなつ)でした。ものに思いが宿って付喪神になる、そうしてここから何世紀も万華鏡付喪神が二人の人生の交点を見ていくことになります。

ゆのくんのソロから、一度目の来世の舞台では明治の鹿鳴館。二人とも裕福になって念願の花火をともに見ることができたけれど、生まれの違い(人種、国籍)がまた引き裂きます。つなぎのあみちゃんと老齢になったクラゲの会話から大正の銀座煉瓦(ショーウィンドーのマネキンがかわいい)へ、比較として所謂普通の幸福なカップルの姿が描かれます。そしてカフェーでは時獄変執筆の芥川と邂逅(付喪神)欲深い情念と憎悪と後悔の炎が焼き尽くす様が皮肉にも空襲の炎とリンクし、次の未来では昭和の闇市です。前ほど裕福ではなくなりますが生まれの違いは解消してもなお今度は育ってきた境遇の差が(これを示す、こうでありたかった純白の二人のダンスが切ない)またも二人を阻みます。

平成時代の中詰で明らかにテイストが変わり、明るいロケットで何かが変わった予感がして盛り上がった後、サチモスでの楽しくて自由なダンスを経て、令和の渋谷にKing Gnuの曲と共に降り立ちます。

疲れた人間たちが満員電車から雨の降りしきる渋谷のスクランブル交差点(これを大階段…!)へ放出され、それぞれの未来に向けて歩きます。傘の色も効果的に使い様々な人の芝居に目が足りないシーン!傘を持ってない子が差した人に出会って入れたもらえた時の安心感たるや…。遂にカラスと人間という出会いの中でどうにか傘を阻止してクラゲを助けたいれいこちゃんの苦しい気持ちがダンスに乗ってなぜかわからないけど涙がこぼれるシーン…。

万華鏡付喪神は二人には何の作用もできませんが、万華鏡を手に取る人は選べます。現代で選ばれたかわいい少女(謂わば審神者?)は、万華鏡を覗いて「綺麗!」と。見る人によって形を変える万華鏡の醍醐味、現代の女の子にはこれまで花火師と花魁が惹かれあってきた歴史も含め見えているものは綺麗なのです、何故なら令和の少女である我々には国籍も金銭も身分も愛の前には大した障害ではないのは勿論、そもそも東京で時代を追うごとに人間の価値観はアップデートされてあれほど2人を苦しめた大半の問題が消滅し、残ったものすらも多様性が尊ばれる今、大した問題でもなくなっているんですから…。そういう現代の人間の目=価値観を通してやっと結ばれた二人はハッピーエンド、絶景の中付喪神も浮かばれて銀座へ。銀座の通りを抜けるとそう東京宝塚劇場、江戸の悲恋は令和のデュエダン(勿論花火付き)で成就です!!!

・総評

内容が天才すぎ。どうか再演してほしい。

転生ものが流行りまくったコロナ禍後でキャッチーにこのテーマをぶつけてきた栗田先生のスピード感は素晴らしいとしか言いようがない。ただ、高齢の方には転生という概念がわからなかったみたいでアンソロジーをそのままぶつ切りだと受け取ったみたいな人の感想もちらほら…あれほど有名な地獄変を読んだことのない人もいるし、こういう知らないとかわからない人に配慮しなくてももう良いんじゃないかと思う次第。何故なら栗田先生の作品には、そういうわからなかった人へのでも何か得るものありましたよね?って手を差し伸べてくれる優しさがあるように思います。この暖かさがbaddyの時より賛否両論にならなかった要因でもあるのかなと。とりあえず良い作品をありがとうございます!

 

 

2023年後半の観劇を振り返る(2023/9~10)

最近見た公演の感想をつらつらとメモです。

 

■9月 雪組公演ミュージカル・プレイ『双曲線上のカルテ』監修・脚本/石田 昌也 潤色・演出/樫畑 亜依子

→まさかこれがそらの最後の男役主演作となるとは…。難しいテーマをどこか軽やかに器用に、でもどうしようもない悲しさはそのままに…何でもできるそらの姿にたくさんの影響を受けた後輩がたくさんいると感じた公演。ヒロインかすみんは歌もダンスも申し分なく、芝居も娘役としての謙虚さや美しさが緻密に設計されていたのが印象的。ひまりはかすみんを吹き飛ばすほどのパワーで緩急を出して役を全う…あがたと二人で真相にたどりつく場面の演技とてもとても良かった…まるで昔の昼ドラのような、でもこれが見たかったというような安心感…。あすくんの役も小気味いい、足された裏設定みたいなものもスマートに昇華。ともかは学年よりも達者な実力で儲け役(それでもなお綺麗)。あがた、まのみ~とさんちゃん、皆かっこいい。白綺さんは思ったより大柄だけど品のある佇まいで今後に注目。

 

■9月 ミュージカル『憂国のモリアーティ』 Op.5 -最後の事件-

→Op.1~4を経て最終回。メインどころにキャスト変更はなく、ここまで真面目に作り上げたキャスト、ピアノとヴァイオリン奏者の方々と西森さんに感謝。良い話というよりかはとにかくすべてのキャストがはまり役なのが奇跡的なシリーズ。昨今の2.5は狭い業界故に俳優の関係性が板に乗るようなことが多く、それが追い風になったりすることもあるがファンの批評や盛り上がりがそこに結び付きすぎたりすることもしばしば。が、実力のある俳優はプライベートで親交がなくとも(また今どのような関りがあるのかが全く気にならないという方が正しい?)素晴らしいケミストリーを魅せる、それをまざまざと感じた公演だった。最後まで良い芝居と歌をありがとうございました!

 

■9月 花組 オペレッタ・ジャパネスク『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』脚本・演出/小柳 奈穂子

→色々なことが起きた中でシンプルに明るく楽しめる作品だったのが非常に良かった。推しのあかちゃんの大劇復帰作でもあり、中々美味しい役。組替え前と後でどのような立ち位置なのか不安に思う二人だけの戦場の後だったから余計にひとあか好きの小柳先生に感謝。

 

ネオ・ロマンチック・レビュー『GRAND MIRAGE!』作・演出/岡田 敬二

→決まった時はモアダンの路線や序列や銀橋を使わない構成を思い出してげんなりしましたが、まさかの良作。この美しいパステルのロマンチックさは正しくタカラヅカ…紫陽花モチーフが美しい。明らかにカレーには野口香水よりこっちの方がハマってました。カンツォーネの緑の貴公子あかちゃん、よすぎ!長身の星空さんとの新鮮なダンス見入った。

・いつもの咲乃深音ちゃんレポ

ムラではパネル入りとのことおめでとうございます!幕開きからセンターでコーラス、砂漠のダンスも滑らかで素敵…。せーのソロの時に最初に登場します(確か帰るのも最後)ジュテームではチュチュ姿でかずみしょうさんの相手役…本当に愛らしい柔和で上品な佇まい!ダンスも歌も芝居も上手い!深音ちゃん最高!

 

 

■9月 アナスタシア

→役変わりが良いと聞いて思い立って観劇。オーブの構造って本当に特別感あって素敵で大好き。ばっちディミトリ、木下アナスタシア、田代グレブ、けんや×コムカップル回。ヅカ版との大きな違いはグレブが恋してない。不思議な縁に慄いている感じが強かった(検索したら田代グレブの特徴らしい、堂珍グレブはアーニャに思いを寄せている濃度が高いらしいとのこと)グレブの解像度が非常に高く、ヅカ版ではふわっとしてた気持ちのところが、お前が父の息子なんだからこの結果なんだ!それを受け止めきれなかった父と折り合いをつけきったグレブに良かったね!と声をかけたくなるような感じでした。(でも王宮からの脱出のシーンはヅカ版の方が好き)コムちゃんは日生で某やばい舞台で見た時よりずっと歌もダンスも健在でかっこよかった。ばっちは甘いマスクで正統派のイケメンだからヅカ版に近い清涼さで良い…イケメンゆえの苦労知らずがにじみ出てる。ちょっとお久しぶり(るひま以来…?)に拝見したのですごく歌が上手くなっていてビビりました、ばっち、立派な帝劇俳優じゃん!木下さんはもう非の打ち所がない、すべてがニュートラルでパーフェクト。上手すぎてよく撮れた映像と音源みたい(褒めてる)

 

■10月 MANA-TRIP

→気が滅入って急遽配信を購入。色々な情勢の中で折しも原点回帰の構成。参っている宝塚ファンはみんな見た方がいい。私の好きな宝塚が全部詰まっていた。若さスパークリングから宝塚の縁を大事になさっているまあ様の人徳に泣いた。みりおん面白過ぎる。愛ちゃんもあきももかっこよくて、まいあもスタイルが鬼。また同じメンバーで集まってほしい。

 

■10月 『スリル・ミー』

→気が滅入って急遽配信を購入2。二人芝居のシンプルな構成ながら非常に考察の余地がある。たしかに人気作でしょう、これは。

スマートなマスクの下に凶暴な影をひそめるまえこ~に弄ばれておかしくなった達成なのか、必死で健気でどこか危うい魅力の達成に引きずられで堕ちたまえこ~なのか?申し訳なくもまず達成が人に踏み倒されるような顔面ではないのでひいき目でまえこ~がお前を好きじゃないわけないじゃん…?というバイアスがかかってしまう。愛が通じ合っていたのか、はたまた独りよがりだったのか、これどっちでも解釈はいいのかな?二人とも強さが持ち味の俳優(でも二人ともベンヴォ―リオ俳優なんだよな~)だから、堕ちた後の緩急がよりついておどろおどろしい。他の俳優でも見てみたい、う~ん。井澤と杉江でどう?(ただのメサイア~~~)

 

 

■10月 ミュージカル『のだめカンタービレ

→推しの仙名様ご出演。某ミュ以来三浦専用演出(またの名を突然の世界観にそぐわないバレエ)があまり好きではないのですが、今回はぴたりと良い感じに溶け込んでましたね!ペトルーシュカでのゆきちゃんとのダンス素晴らしかった!有澤氏は刀やキングダムで見ていた時よりもずっと俳優としての格が上がったのにびっくり…次は帝劇主演て…刀時代の観劇していた私に言っても信じないと思う。今数多の若手俳優の中で一抜けに最も必要なのは身長と声量なのかも…(テクニックは後からついてくる)演出駆け足でよく頑張ったと思うし、クリエでもオーケストラの構成はお見事!そしてめちゃめちゃ勿体ない竹内君の使い方…。竹内君はガイズで見る予定だったのに無くなってしまったから残念で今回見れて良かった。かなり上手いしルックスも素敵だから売れそう。とにかく歌パートは三浦氏が殆ど引き受けていてさらに踊るもんだから一人だけとんでもなくハード、お疲れ様でした。ちなみに前半ゆきちゃんは兼ね役で審査員やクラブシンガー等もやってました。赤いドレスで苦悩する姿にベアトリーチェを思い出してほろり…。

2023年中盤の観劇を振り返る (2023/6~8)

最近見た公演の感想をつらつらとメモです。

 

 

■6月 月組公演 ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』 潤色・演出/生田 大和

→配信で視聴。

月組、芝居上手いわ歌上手いわで大満足。レベル高い!!!れいこちゃんの人間離れした美貌とクラゲの芯から品のある美しさがこれでもかとマッチしていて良かった。意外にもれいこちゃんの「美しさ」が前面に押し出された作品が勿体なくも少なかったものだから、これは本当に見たかった「月城かなと」だった!

れんこん、るね、りり、歌うまが海外ミュらしく抜擢。珍しくりりがきよらさんよりも活躍していたけど、ダンスシーンは努力が見えてかっこよかった。れんこんときよらさんの恋愛模様も最後にきゅんとする感じで最高!ヤスをはじめとしたキャストも大健闘…一点だけゆの君の使い方、勿論十分にうまくこなしてはいたものの、やはり少し荷が重いというか当然父親役にはまだ早く、前半のコメディなのかシリアスなのか振り切りづらいところに役どころの苦悩を感じた。ちなつのほうが適任だっただろうがこれは仕方ない。みちるも割を食った役で少し悲しかったけど、こういう役を任せられるというみちるの実力に感服。

 

 

■7月 雪組公演 ミュージカル・ロマン『Lilac(ライラック)の夢路』-ドロイゼン家の誇り- 作・演出・振付/謝 珠栄

→ものすごい突っ込みどころが多い作品、賛否両論も納得。

・あらすじの整理

ハインドリヒと兄弟は鉄道事業を進める。末っ子の紹介でヒロインエリーゼとアントンと出会うも末っ子は亡くなる。鉄道事業の融資を受けれるかの条件であるディートリンデとの結婚を巡り、ハインドリヒと次男フランツがトラブル。突然父親に隠し子のうわさ!体の弱い母が家族を託した女性(移民、外国人)が更に子供を産んでいた、が迫害に合っていた…それがアントンでした!思いつめたディートリンデが人を使ってエリーゼらを襲撃、フランツがもみ消すも別れを告げる…融資も足りない…八方ふさがりの中エリーゼがディートリンデの金で融資不足を解決!ハインドリヒと次男フランツがそれぞれハッピーエンドへ~大団円。

・良かった点

各場面のとにかく画がきれい。ゲオルグ関係は全てかっこいい。特に冬のデート場面の和希そらとかすみさんのシーンなんてずっと見ていたいくらい可愛かった。兄弟も楽しい、特に最後のあがた加入までのいじらしさに震えた。美穂さんのシーンでは泣いた。

そして推しの野々花ひまりちゃんの演技、そしてあーさとの芝居が萌え、、面白過ぎた!ギミックが面白過ぎる…!例えば、ショールを落としたディートリンデと暗転した後、真面目なあーさが次の日要人との会議に遅刻するとことか…!とにかくディートリンデは単なるわがままな悪役令嬢ではなく、自分の本質的な部分に自信がない故に人を試しがちな悲しいキャラクター。フランツも全てを投げ打ってまで愛しているくせに…この男、ディートリンデに私を愛しているの?(意訳)と聞かれて「どうかな?」とはぐらかす…!イケメンな顔面でごまかされがちですが、婚約もせずに関係を持ち、僕は他の人と違って君を愛している!家柄がなくとも君を愛している!兄には渡さない!と真摯に伝えれば良かったものを、こちらも兄にコンプレックスを抱いた男なので、上手く差配できず、結局あのような事態に…笑 ディートリンデはフランツに何度もチャンスを与えているのに…笑

はてなポイント(主に全てが突然)

ヒロインの服装が豪華なのにそこまで裕福そうな家ではない、のにピアノの習う余裕はある。

弟の具合が悪いのに街で連れまわされる(そして間に合わない)

ヒロイン、急に葬式で親族席に座っているような感じ(ディートリンデが不愉快になるのも当然になるぐらいの距離感)

ヒロインがオーケストラのオーディション落ちる、私が女性だから…→なんやかんや私たちめっちゃ気が合う!付き合おう!の流れ笑

夢人のセリフが難しすぎる(リフレインしない)

・主題は?

美穂さんパートであったように女であることや外国人であること等、いわれのない差別に苦しんだすべての人間の怨念のようなものがベースにあり、それにヒロインたちは飲み込まれずに明るい将来を描き出そうとし、彼女が守り切ったアントンもその幸せの輪に入れたという落としどころだと思います。

エリーゼは女性だという理由で臨んだ職業につけず、男性社会に抗戦する気持ちを持つ→それに理解を示す理想のパートナーハインドリヒ、でも違う方法もあるんじゃない?とすごい合理主義(げんようの谷のラストの地を捨てるシーンと同じような感覚)→ハインドリヒ資金不足に悩む→エリーゼがディートリンデの鉄のアクセサリーを買い取る建前で出資。駒のように生きてきた彼女たちは男性と同じ社会に参画して一矢報いたという流れかと思います。傷心ヒロインに夢を変えてみたら?とちょっと無慈悲(たまたまヒロインが芸術家になりたい訳ではないからこのアドバイスはセーフだったけど、普通は芸術の道を究めたい人にこれは禁句だよね)なハインドリヒ…(7ディートリンデがフランツと関係を持っていることに気付いているからだとは思うけど)はなから全然取り合わないハインドリヒ…、完璧で素晴らしい長男も二人の女性の助けなくしては夢を実現できないシニカルなエンドをあまりあるラブロマンスで帳消しにするヅカらしいエンディングパートで楽しかった。…なんでか結局面白かった、この作品。笑

 

ファッシネイト・レビュー『ジュエル・ド・パリ!!』-パリの宝石たち- 作・演出/藤井 大介

→グランカンタンテを思い出した。正直こう萌えポイントのないまま単調?というか巴里と銘打っておきながら落ち着いた展開で進む。これはこれで好きな人も一定数いそうな穏やかな感じ。

モンパルナス芸術の街(あーさひまり)の場面は溌溂としていて爽やかで良かった。萌えすぎてオペラが下がらない。巴里なのにエジプトがあり、そらの華やかな場面に男役あの縞々頭の飾り不要に感じた。咲ちゃんのドーファン素敵!夢白さんはポージングがセンスがある。ノートルダムのありすひめかは一人大抜擢。あとサンジェルマンはさすがに見ごたえがあった。クラシックとモダンの分け方も面白い…咲ちゃんは全ての場面で衣装もメイクも髪も創意工夫が見られて本当に素敵で情熱が見えてかっこいいなと改めて思いました。だから夢白さんはメイクをもっと咲ちゃんに合わせた方がいいかも。元々かっこいいゴージャスな顔だから咲ちゃんが余計女性的に見えてしまっている気がする、、もっと優し気な色味にした方がカップル感が出る気がする。そしてデュエダンが強めの衣装ながら穏やかな踊り過ぎたので次回に期待。

 

■7月 ムーランルージュ

→帝国劇場にてだいもん×芳雄を二回観劇(違いはロートレック上川さんか上野さんか)若く才能あふれる男が息も絶え絶えながらに気高く美しくステージに立つ女性に恋をする話。やはり芳雄には「若さ」はないがそこはあまりある技術力、巧さでカバー。こののち初演は「芳雄」と語り継がれるような素晴らしい歌声だった。だいもんはドリームガールズの比じゃないぐらい歌も高音が出ていて、スターのオーラがただ者ではない輝きで満ちていた、ステージを一人の存在感で埋めるということに抜群に慣れていて(ただ上手いだけではない技術)、弱っていくサティーンの展開の対比が見事で…もうだいもんファンにはおなじみの悲劇は十八番すぎて大拍手だった。ロートレックは上川さんの方が頑固で芸術家一直線な感じ、上野さんは周りに優しい中でも芯があるような違いだった。

今後キャストが変わってもこれを超える演者は出ないのではないだろうか…若くて歌の上手い女優さんはたくさんいらっしゃる(木下さんとかきほちゃんとか)けど、あの年齢とキャリアでステージをあれほど煌めくダイヤモンド色に染め上げる方というのはこの時代には本当にだいもん(と平原さん)しかいないのではないだろうか…ムーランルージュが決まった時は随分他の女優の名前も候補に出たけど、やはり納得のキャスティングで大満足。チケット代についてもこのクオリティと舞台セットと衣装を見れば特に高いとは思わないですよ!!!

 

■8月 宙組公演 ミュージカル・ロマン『大逆転裁判』-新・蘇る真実-脚本・演出/鈴木 圭

→KAATで観劇。

シンプルに面白かった。ゲームはしていないが分かりやすく誰が見ても楽しく軽快なストーリー。裁判のリアクションもコミカルでかわいい。もえこの立ち姿に寄り添うひばりのかわいさも良く、こってぃは常にアイドルめいたキャラデザでかっこよかった。みねり、キヨも重要なポジションで好演、のあんも歌が上手く堂々としていたのが印象的!

 

■8月 星組公演 スペクタクル・ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』 潤色・演出/小池 修一郎

→幸運にも一度観劇、配信で二回鑑賞。パンフレットすら売り切れる大大好評好演。

言葉もない程上手い礼真琴。もう感想もない程上手い。初めて見たサイラモナムールで笑ってしまうほど圧倒された。いつもこの時代で一番歌もダンスも芝居も上手いと思うけど、今回もまた最高値を更新。こんなに何でもできると際限なく周りも要求してしまうし、自己研鑽もすごいのでしょう。。ご健康に気を付けてお過ごしいただきたいですね、、漸くありちゃんという何でもできるスターを従え、せおも本来のキャラや実力を活かせるようになってきた星組新体制が活きていた。くらっち、ほのか、ぴー、ひっとんもそれぞれの個性が出た巧みな芝居と歌声で感動。丁寧すぎるほど慎重に育ててきた極美はこの大試練を良く乗り切ったと思います(何様)。特に気に入ったのは盆が回る中での立膝ありちゃんに縋り付く詩ちゃんのシーン。離れがたい気持ちを感じるサイラモナムール前のケミが物凄く良くて(さすが芝居の月組)これ配信に映らないのは本当にもったいないと思った。休演時の代役も含め素晴らしい公演をありがとうございました。

 

2023年前半の観劇を振り返る②(2023/4~5)

最近見た公演の感想をつらつらとメモです。

 

■4月 星組公演Bow Workshop『Stella Voice』 構成・演出/中村 一徳

→配信で視聴。ぴーちゃんの人柄、お姉さん気質のやさしさを感じる温かい作品。実力派スターとして存在感を見せつけるような意義深い(今後の路線関係の事を考えても…)バウ公演でした。特にすごかったのは森先生振り付けであろう場面。そしてここに出ている殆どの下級生はかなりの歌うま。中でも気になった方々をメモ。ナンバーワンシンガーは碧音くん。ダンスもすごい、休演が続くのが少々気になる…新人公演でも今すぐ主演してほしいのに…。羽玲くん、きしょ~くん、大希くん、詩花すずさんも歌うま。星咲ちゃんとてもかわいくて歌もうまくてダンスも姉のともかちゃんそっくり!大好きな芸風でこれからも注目の逸材!

 

 

■4月 星組公演 『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』 潤色・演出/谷 貴矢

→配信で視聴。あのタカヤがちゃんと恋愛を!なこちゃんを外したイレギュラー公演ということを十分に生かした配役(正ヒロインがいない)でとんでもないクオリティに昇華させるのはさすがの一言。ありちゃんのミステリアスさがれいまこの繊細な美しい若者造形力と相まって素晴らしい出来。赤と黒役も良かった。セットも衣装も面白い作りでキャストが動かす無駄のない展開も含め大満足!最後首元の赤い衣装で現れた時は呻いた。くらっち有終の美に対抗する詩ちゃんの芝居もいい…!星組らしい華を堪能!

 

 

■4月 月組公演 平安朝クライム『応天の門』-若き日の菅原道真の事- 脚本・演出/田渕 大輔

→2回観劇。うち、一回はSS!漫画読了済。

配役の時点でこれは絶対面白いぞと思っていたが予想より遥かに画が面白かった…!大劇場でこれほどまでに2.5次元っぽい演出はなかなか挑戦的で良かった。車と鬼の場面とかとてもワクワクする演出が多いし、段差を使った不穏な終わり方も大満足!いじけていてもれいこちゃんの芝居はため息が出るほど自然な発声でいつ観ても驚き…!立ち姿も性格もビジュアルも満点のちなつに、硬派な魅力のれんこん、抜擢のぱる、透明感ある歌声のるおりああたりは印象的。何故るおりあがこの公演の新公取れなかったのか不思議なレベル。一方娘役は少し雑な扱い、でも原作あると難しいからこの辺はショーで釣り合いも取れているしご愛敬。

 

ラテン グルーヴ『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』 作・演出/稲葉 太地

→稲葉かわぞこペアにしては衣装が良く、それだけでフラットに見れたのか、、まさかの全体的にも面白かった。パンフレットのれいこちゃん超美麗ビッグショット!海神れいこちゃんがあまり踊らないのもその類まれなる高貴さでねじふせてくるラテンショー。一番お気に入りの場面はCOOL LADY。マンボの女が良すぎた、特に清華さん!!痺れるビジュアル!クラゲの緑衣装は某海外ミュのオマージュですね。そこから真珠と戯れるれいこちゃんも麗しく、ゆのくんのじゃんけん時の勝利の雄たけびと煽りは毎公演面白過ぎた。ぱるあみ中心のニューファイヤー(今作のはgroovy grove)もエモかった…。月組の娘役ってなんか面白い、他の組と違う。とんでもなくダンスの上手い娘役は天愛るりあさん?月組に詳しくなくて。。美海そらちゃんはモデルのようにかわいくてスタイルが良い。マントルロケットの舞音ちゃんの表情管理が愉快だった。

デュエダンはクラゲが超絶技巧で引っ張り、このダンスどうなんだ…と思わせといての最後キスのどんでん返しで拍手喝采だった。エトワールの役変わりも毎回感動した。賛否あると思うけどたまにはこういうのも組子の士気を上げていいのでは?可憐に見せかけてきよらさんのが思いのほか迫力あって一番好きかな。でもりりちゃんのも情念深くて良かった。とにかく歌詞が良いんですよ!!!「もう愚かな駆け引きはしない したくはないから 全てこの身体 心も全て 今あなたにしばられたい」を、あの駆け引きデュエダンの後に…!だ~~~!稲葉先生見直した!!

 

 

■4月 花組公演Musical『舞姫』-MAIHIME-~森鴎外原作「舞姫」より~ 脚本・演出/植田 景子

→配信で視聴。たまたま主演のほのかちゃんが喉を傷めたようで思うような歌やセリフになっていなかったのではないかと思いつつ、最後まで堂々とやりきってた姿に好感。軍服でもなんでもとにかくかっこいい。将来のトップスター候補ですからこれぐらいの失敗は何も影響ないと思って余裕に見ていられたのもあるのかも。原作よりも女性を見下げた描写を減らして真のロマンスへと昇華しているのでまあまあ見ていられるけどそれにしてもやはりセンセーショナルな元々の酷い原作がちらついて…。二部の帰国の意思を固めるまでの演出、床が割れるところかなりいいです。

美羽さんはダンスの人というイメージがあり、ヒロインの抜擢には正直驚き。ビジュアルも外国の美少女という感じもなく、この役自体はあまりあっていなかったので他の作品で見てみたい。咲乃深音ちゃんはだいやの恋人で芝居も歌も良かった!深音ちゃんの油絵売ってください。だいやとの並びは何回目?大好きです。すみれちゃんも日本に残した妹の芝居が切なく、、。ドレスのゆゆちゃんも華やか。あまり出番のないほってぃは健気男(最後とんでもない献身…)を好演していて、良い上級生になったなと思った。馳役のだいやは多分一番おいしい役どころでその抜擢にちゃんと応えて泣かせる芝居を見せてくれたのもGOOD!下級生のころはほのかちゃんは穏やかでかわいいような役ばかりやっていて。冬霞で真反対の荒いバチバチっとした役が意外にもかな~り合っていたのが衝撃だったので、意外と悪役のがハマるのか?!!!今後はどんな役が来るのか気になる。次は東上でしょうし、どんな展開になるのか期待。

 

 

■4月 花組公演 ミュージカル・ロマン『二人だけの戦場』 作・演出/正塚 晴彦

→配信で視聴。一路さんの初演は映像視聴済。ダンスの得意なカレーが持ち味とあってない役をやることに…と驚いたが、再解釈してとにかく優しい主人公になっていてそれはそれで楽しめた。場面の照明が暗い分、一路さんは正義が先立ってたけどカレーは他者への思いやりが見えて、その分ひとこが硬派な魅力を湛えていた。特筆すべき点として初演はとにかく初々しいお花様が最後の病院での再会で大化けして品のある女性に変身するところが凄すぎて名演技とはこのこと…と衝撃。まどかちゃんのライラは若いころの演技はいつもと口調も違って面白かったし流石に上手いなと思った、けど再会シーンはいつものまどかちゃんだった。かわいすぎて壮年感が出ないのはリストの時から変わりなし。これはお花様の元の品格がすごすぎただけなのかも。花組に帰ってきた我が推しあかちゃんは見せ場のない役でもしっかり演じ、後輩への指導等も欠かさない素敵な上級生として誇らしかった。(正直扱いには不満)最後に、マサツカ芝居常連のりんきらは見事としか言いようがない。

 

 

■5月 宙組公演 アクション・ロマネスク 『カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~』 脚本・演出/小池 修一郎

→3回観劇。他にも新人公演や千秋楽は配信で視聴。

ストーリーはイケコのオマージュだらけのロングコントなのでもう特筆すべき点はないです。イルカイルカ。とにかくまかたんの偉大な歩みに感謝。かのちゃんもよく食らいついてたと思います。サヨナラショーも感動しました。今後のみねりの扱いだけが心配ですが、宙の次は中村Bなので素敵な場面が用意されていると信じて…。

・新人公演のメモ

久しぶりに新人公演らしい初々しい主演の二人。伸びしろですね。

あのんゴージャスで強い。成くん適役、歌ももっと聞きたかった。真白の役が勿体ない、主演でも良かった。サラちゃん度胸があってやり切り方が素晴らしい。のあん君の安定感(売れそう)。エイティの身体能力高い。ひばりかわいいけど細すぎるような…。

 

 

■5月 『SHOCK』

→前楽を観劇。北山君ラストステージということでキスマイFCが仕事をしてくれた。『SHOCK』自体は何度も観劇済。特に推しのTJ川島如恵留くんの出演公演は何度も観ているが、コロナの影響で北山君の博多座に行けずに今回がラストチャンスということで気持ちを入れて観た…。相変わらずのストーリーだが変わらないクオリティを保ち続ける光一くんはすごい。本当に凄いの一言。

ライバルヒロミツは歌もダンスもリズム感も良く、とにかく健全だった。これまでの私の見てきたライバルはどこか割り切れずに子供っぽくて本当にステージ0番に立ったことがないがないような理想と現実に悩む人間に見えていたが、ヒロミツは違った。北山宏光自体がセンターに相応しくあらゆる経験を積み、実力も華もあり愛想が良いので、言っていることも至極真っ当で…これまでになくヒロインの見た目がとんでもなく幼いせいで(実力の事を言っているのではないです、歌はお上手でした)コウイチを支持する様子も滑稽で、かえってコウイチが独裁者のような見え方になっていたのが新しかった。コウイチ自身最後に謝っているのも今回は捉え方が異なり、ほんとにそうだな~と思ってしまった。今後ヒロミツより強い(歌やダンスが上手い人は他にもいるのは重々承知だが、オーラや経験がものを言う世界でもあり…)ライバル役を見つけるのは相当大変だと思う。北山君、大変お疲れ様でした。

 

 

2023年前半の観劇を振り返る(2023/1~3)

見た公演の感想をつらつらとメモです。

 

 

■1月 星組公演 浪漫楽劇『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』─並木陽作「斜陽の国のルスダン」より─ 脚本・演出/生田 大和

→私事ですが初日界隈のSSチケットが露と消えました。本当に残念ですが別日に見れたので良かった…このご時世、複数枚離れた日程で持っていないと不安ですね…。リラの精霊から見た国土の変遷というバレエのような世界観の群舞が挟まる綺麗な絵がいっぱいの悲劇。どうして礼さんはかわいくて献身的で悲しい役がこんなにも似合うのかな…。生田先生の花組リストはあんまりハマらなかったのですがこちらは良作でした。

・全部ギオルギのせい

ジョージアの若き王ギオルギは全方位に向けて優しく思いやりの心を持ち合わせた自己犠牲の精神のカリスマ男だったせいで、アヴァクという信者や過保護に育てた妹、物わかりの良すぎる妻などギオルギの良かれと思ってしたことが尾を引いて後の悲劇につながっていくのが見事でした。忘れがちなのですが自己の強い信念で突っ走っているディミトリとみせかけて、その献身と愛そのものがギオルギの呪縛=自分を唯一人間として認めて苦しみを共に背負ってくれたギオルギ(と妻)の生き方への心酔であることは思い出さなければいけないポイントで、そのために度々ギオルギの幻影が出てきます。名前と宗教を失って祈る神も定まらない空虚なディミトリにとってはただ一人の大人(保護者)であるギオルギの見せた苦悩は鎖となり、年上のルスダンへ単なる恋以上の愛を捧げていたのは…たくさんの選択肢を持てる(結果は一つとはいえ)ルスダンが美しい年下の男に心奪われた重みとは訳が違う…この辺がまた苦しく美しい…。兄の伴侶を無下に扱ったルスダンが、自分が結婚した後家臣に配偶者ディミトリを排除されて因果応報になったり、王冠を捨てて不倫した挙句に失策を重ねて王宮と国民を捨てる…原作の主役であるルスダンにはどこもスカッとするところがないのが結構辛いのですが…ムラでの芝居で最後に詫びるアヴァクへルスダンが今度は伴侶を~と言い放つとこが結構覆水盆に返らずを体現している感じで唯一その場面が好きでした。(東京で観劇時には互いに疲弊した感じが全面で薄まってしまいましたが)

・ディミトリのテリトリー

彼がトビリシ陥落から奪還、ひいては王宮のリラの木にこだわり続けた理由はディミトリの歌にもあるように「どうか覚えていてほしい このリラの花にかけて誓おう 何があろうともぼくだけは 君の味方でいると」の誓いを守り続けるためだったという悲しい展開。ディミトリの自由に動ける範囲は王宮だけで国や民衆ではなくその小さな地だけが彼の故郷だったわけです。彼の魂も最後にそこに行き着いたのも含め切ない。ただ最期にジャラル様が生き方を肯定してくれたこと、ディミトリのことを信じてくれたナサウィーが傍にいたことだけが彼の幸運だったなと思い、生田先生の配役センスに唸りました。

 

 

メガファンタジーJAGUAR BEAT-ジャガービート-』作・演出/齋藤 吉正

→最高。最強。ここ2.3年で見たショーの中で一番パワフルで面白かったです。雪組のセンセーショナルが期の若い子まで個々の力で推し進める感じでこれも良かったのですが、今回は路線スター筆頭に進めるショー。モアダンのようにスターや序列のないショーで溜まっていた鬱憤が晴らされたエキサイティングな構成でした!

・わけのわからない世界観とあらすじ、それがいい

「宇宙空間に浮かぶ名もなき星の荒廃した砂漠ーー。かつて花が咲き、生き物が歌う桃源郷であったその場所は、ブラックパピヨンの首領・マーリン(暁千星、魔法使いで猛獣使い)たちにより侵され、今は生気をなくし、荒れ果てた姿となっていた。宇宙を旅する幻の鳥クリスタルバード(舞空瞳)は、彼らの襲撃により片翼をもがれてしまう。しかしクリスタルバードが恋の担い手クピド(小桜ほのか)の歌により渾身の力で舞うと、荒廃した砂漠に奇跡が起こり、舞台には極彩色の植物、色とりどりの花々が息吹く。そして一つの尊い新たな命が生まれるーーJAGUAR(礼真琴)の誕生である。」

以上あらすじです。訳がわからないと思います。考えるな感じろ。

情報の切れ端だけが記載したパンフレットや歌劇を読んでも理解できない。わずかな情報をもとに少し考えてみます。

この世界は対になっていて多分半身や欠けたものを追い求めるというのがテーマなのかな?クリスタは魔法使いマーリンの策略で片翼をもがれますが(翼は不思議な力を持っていて皆が欲しがっている)クリスタ以外が持つと不幸になる反作用有。クリスタの涙から生まれたジャガー君はクリスタに一目惚れし、一方同時期に生まれたバファロー(瀬央ゆりあ)は多分ジャガーの半身?地の果てまでも追ってきます。ジャガー君はクリスタに片翼を取り戻してあげると誓って探しに行きますが、途中マーリンが仕掛ける機械じかけのサーカスに巻き込まれたりして感情の何たるかを吸収していく大冒険でドタバタ。中詰はアステカ神話のパロ。実はジャガー君やバファロー君達は皆古代神でした!?色々あって、マーリンの過去編。宙を旅するナルキッソス(=過去のマーリン)は実は美の神アフロディーテ有沙瞳)を振って、これまた美しい青年アメイニアス(極美慎)と恋に落ちます。アフロディーテの怒りを買って、彼らの心は石にされます。恋人を失ったマーリンは災い(=愛)として世界を引っ掻き回し、クピド(=恋)に付き纏われながら、失った半身を探しているのです…(急にとってつけたような考察)最後になんやかんやあって、天国で再会したJAGUARとクリスタルバード。白いドレスのデュエダンで幸せエンド。

なるほどわからん。でも超絶楽しい!!!物語関係ないエンディングパートも最強星組集団が全力疾走していて暗転なし電力大爆発のメガ!ファンタジー!でした!

・総評

新星大津先生、そして改めてサイト―先生に感謝!我が推しあかちゃんも大満足な出番をいただき、ファン冥利に尽きました。悔いなく花組に戻ります、、星組の皆さま&星組ファンに温かく迎えていただいたことは忘れません…!!!

 

 

 

■1月 宙組公演 真風涼帆リサイタル『MAKAZE IZM』構成・演出/石田 昌也

→配信にて観劇。大変な騒動の中、まかたんの最期のコンサート堪能しました。本当にお疲れ様でした。誰が何と言おうとこれまでのまかたんの歩みと功績は素晴らしいものです…。石田先生がパンフレットで自分でも言っていたようにFWMと違って真新しい内容もない、特に何ということはない内容ですが、気の毒だったカルトワインの一場面が見れたのは嬉しい誤算。改めて潤花の明るさがファンの心を救ってくれたなと思いました。ありがとうかのちゃん。

 

■1月 宙組公演 バウ・ドリーミング『夢現(ゆめうつつ)の先に』 作・演出/生駒 怜子

→1/16配信にて観劇。この公演2022年度で一番泣きました。

正直、ビジュアルイメージを見た時、封神演義でおなじみフジリュー先生の世界観の要素が強すぎて公演解説も相まってもしや哲学的な話?と多少不安もあったのですが、生駒先生の構想力並びにタカラヅカの形としてどこで帰結させるかどこまでリンクさせないかという潔さのセンスが最高でした。

・一幕と二幕の展開の違い

一幕は僕と彼女の恋愛が主軸。奥手で自信のない主人公こってぃが夢の中で現れる彼(あのん)と共に過ごし、夢の世界の住人と増えるかわいい羊と共に自分を変えようともがく物語。最後に王道のラブストーリーで思わずキャーと叫びたくなる僕のかっこよさ!この子ポテンシャルはあるんです、と謎目線で応援したくなる。ひばりちゃんも文句なしに可憐で素敵な女の子を好演。

二幕は一幕から続く異音や嫌な気配の正体を探りながら、謎めいた彼について今度はベルトや鎖の取れた衣装を着た(=トラウマからの脱却)僕が追いかける話。夢の世界でしか会えない彼は現実では事故で植物状態にあり、病院に何年もいます。かわいくて献身的な羊の一部が現実世界のパパとママであったり、増えていく羊の秘密、無機質なチューブの近未来的な衣装が徐々に血の管が巻き付く見た目の変貌、愛情深いぬいぐるみメロ(泉堂成)の大健闘の芝居がクライマックスへ導き、遂に二人は出会います。ここまで「まだ見ぬ君に会えたなら」の歌唱で何度もリフレインする君は一幕ではヒロインひばりで二幕では友達あのんのことでしょう。最後に僕は扉の前で彼に呼びかけます。陽気で明るい一幕の彼はもうそこにおらず、「現実では歩けないかもしれない!失望させるかもしれない!」と泣きながら訴えます(ここで優しい羊たちは彼の心の安寧秩序のために引き止めますが、メロだけは外に出るのを決死の覚悟で促し…)僕は一幕で彼からもらった勇気を愛と思いやりに変えて気丈に待ち続けることを伝え、メロを抱きしめた彼は勢いよく扉から飛び出して僕と抱き合うのでした…(号泣)これはタカラヅカ版ですからきっと彼の病状はすぐに良くなり、僕とも現実で仲良くできるご都合設定が見えます。そこがいいのです。(外部だったら事故はお互いのトラウマの要因だったり、ヒロインとくっつくのは彼の最期を見届けた後になるかもしれない。そういう残酷さがないだろうと確信づけられるところがヅカのいいところです)

フィナーレパートもデュエダンもセンス良く小綺麗にまとまり、生駒先生の今後に期待大です。

 

■2月 憂国ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.4 -犯人は二人-

→2/12配信観劇。OP1から観劇していますが、今回は配信にて観劇。

一貫して品のあるコンセプトやロンドンのほの暗さを纏わせている照明、ピアノ&ヴァイオリンの生演奏はそのままに天井知らずのおしゃ哲こと鈴木勝吾のストイックな歌唱が(もう少しエンタメ感があってもいいのではないかと思うぐらい)続きます。いつもながらシャーロック・ホームズ平野良と光の主人公兼ヒロインのワトソン鎌苅健太(ココア男から全く変わらない光り輝くオーラ)の芝居のケミが良すぎる…今回はアダム・ホワイトリーの川原一馬くん(久しぶりに見た)と悪役チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンの藤田玲くん(いつも大好き)の熱演も支え、最終局面(?)に向けて準備は整ったという感じ。

 

■2月 DREAM GIRLS

→2/13国際フォーラム観劇。文句なし、とんでもないクオリティの歌唱の嵐。

そもそも映画はディーナ・ジョーンズのビヨンセが美貌を買われてサブからメインに鞍替えし、元々の歌一本で押し出したふくよかなエフィ・ホワイトが諸般の事情で追い出されるという展開ですが、多分知らずに見に行った観客は一幕の主人公がだいもんではないことに驚いていたのが幕間の反応としてウケた。映画よりローレルの出番や恋模様の詳細があったのは意外!saraさん大きいけど上手いね、ファントムも期待。一幕終わりの福原みほさんが上手すぎて(本物の心のある歌唱、技術だけじゃないね…)これを超えるメインの置き場はどのようになるのかと戦々恐々としていたら、ゴージャスで華々しいオーラのドレスアップしただいもん(激痩せ)が出てきて一安心。キャッチ―なスターを有村先生の素敵な衣装が舞台を彩り、セットはシンプルながら盆が回る構成で飽きさせない凄い舞台でした、大満足。

 

 

■2月 キングダム

→2/20帝国劇場にて美弥ちゃん回観劇。帝劇が少年漫画のような題材を取ることも驚きながら、キャストが帝劇らしからぬ人選でクリエではなく…!?と驚きましたが次のスパイファミリーも含め新たな顧客取得にはピッタリ。客層がいつもの帝劇っぽくなくて2.5次元から初めて来たような人もいるのではないか…良い意味で新鮮な感じ。二幕はファミリーミュージカルか?というクオリティのところもあり、子役も含めバラツキが逆に肩ひじ張らずに原作通りに楽しめた(映画版とは少し違う構成なのもGOOD)

 

 

■2月 雪組公演 Musical『BONNIE & CLYDE』 潤色・演出/大野 拓史

→配信にて観劇。見慣れないコンビの紡ぎだす芝居のリズム…この作品はヒロインが勝気すぎるので次のライラックで見極めたいところ。推しのひまりはとってもかわいくてやはり芝居が上手い。雪組は端から端までイケメンすぎますな…。そして大野先生のあらすじの作り方かなり綺麗で見直した。柳生しかり、エログロを排除してタカラヅカの品格に合わせるセンスがいいです。

・つらつらメモ

下級生のまで大活躍。愛陽みちちゃんの長くて上手いソロからスタート。このみさんとてもお綺麗で母親役も素敵。菜乃葉さんスター役で面白い起用。愛空さんがともかちゃん・ありすちゃんと三人娘的な扱い、抜擢だね。夢翔みわさんが少年クライドで歌が上手い。咲城くんは良いポジションながらあまりに芝居の経験が足りていないような気がする、星組でもう少し路線として扱ってから輸出した方が良かった気が…ただ、ダンスは品が良くて雪組っぽい。愛羽さんの女知事も珍しい起用、しかもお上手。かりあんとはいちゃんの役がいつもと逆な感じでそれも新鮮。

 

 

■2月 花組公演 ミュージカル・ロマン『うたかたの恋』 脚本/柴田 侑宏 潤色・演出/小柳 奈穂子

→イープラス貸切観劇。タカラヅカの様式美、古典、ロマンス、教科書のような作品ながら令和の感覚でそぎ落とされた改変もあり、作品としては良かった。咲乃深音ちゃんの歌姫マリンカの純に素晴らしい歌唱力(今回スパイ要素消えてた)を筆頭に、音くり寿が去った後の花娘の実力派が漸く持ち味を出し始めたという印象。ステファニーのうらら、艶やかで華美なメイクが良く研究されてて目を引いたし、芝居も胸に来るドラマティックさだった。凛乃の母親役も独特な言い回しが大好き。ことの、糸ちゃん、すずみさん、みくりん、みこちゃんも健闘。千秋楽配信でみたまどかの謎のメイクも観劇時には修正されていて気にならなかった、どのドレスもかわいく着こなし、ルドルフが病み切った後半はまどかの強さが良い感じに寄り添っていたのが印象的。

 

タカラヅカ・スペクタキュラー『ENCHANTEMENT(アンシャントマン) -華麗なる香水(パルファン)-』作・演出/野口 幸作

→大好きな野口先生のスペクタキュラーシリーズの新作!と期待しまくっていたのがいけないのか、はたまた野口先生のショーには歌えるトップの布陣の方がより良いのか?予想よりトーンが低くて印象に残らない構成だった。多分この前のデリシューで様々なご意見があったところ()を絶対に今回は文句言わせない!とばかりに保守的に作り過ぎている。早く元の野口君に戻ってほしい。

・良かった点

アロマの淑女たちの装い。素晴らしい空気感で盆が回るサイドで寄り添いあう花男と花娘が重そうな衣装で優雅に佇むのは眼福…!そしてオリエンタルの場面の精度の高さ。各スター登場シーンが素晴らしい!!!お馴染みブラックバードの衣装はテンションが上がる!チャイナ服の着こなしも最高!曲のアレンジもかっこいい!

・あまり好きではなかった点

いつもより予算不足?かわいく見せかけてデリシューよりも応用の効かない感じの衣装。恒例ゴンドラがない。市販の有名な香水にインスピレーションを受けて描いた割に、マリリンモンローのとこぐらいしか上手く観客に共有できていない感。銀橋渡っても路線スターの声がとにかく抑え目で小さい(これはマイクの問題かも…?)野口君渾身の歌詞が聞き取れないのはもったいない…。ムスクの場面で歌うまに歌わせずに謎のバックダンサー集団にしたところ。マリンの場面の娘役の衣装や髪形が一つも上品さを感じさせなかった、夏休みの山登りや川遊びする少年少女か…?デリシューでは選りすぐりの美女7人がクリスマスのパリジェンヌを素敵に表現していましたので今回も期待していましたが、、。次回の雪組公演では元の野口スペクタキュラーに戻ってほしい!!!

 

2022年後半の観劇を振り返る(2022/10-12)

年末までに観た公演の感想をつらつらとメモです。

 

 

 

■10月 花組公演ミュージカル・ロマンス『フィレンツェに燃える』

→柴田先生の若い時にお書きになられた1975年の愛の二面性がテーマの作品を47年ぶりに再演。大野先生がリバイスしたものの、熱量的にご希望ではなさそう。。

・ざっくりあらすじ

フィレンツェの貴族兄弟が遠縁の亡き伯爵の後妻パメラに出会い、正反対な性格の兄弟のうち、聡明でノーブルな兄のアントニオがパメラに惹かれ、パメラもまた彼を愛するようになる。奔放で自由な弟レオナルドは兄を思うあまり二人の仲を引き裂くべく、パメラを奪うことにする。パメラもレオナルドの思惑に乗り、アントニオの名誉を守るために身を引くが、昔の恋人オテロと今の恋人のマチルドが密かにフィレンツェにやってくる。アントニオは幼馴染のアンジェラと良い感じになり、レオナルドは国家統一運動へ傾倒していく。パメラは未練があって中々立去れないところ、オテロが襲い掛かる。いつの間にかパメラを本当に愛するようになっていたレオナルドが守ろうとするが、絶命間際のオテロは引き金を引き、オテロとパメラは命を落とす。悲しい顛末にマチルドがオテロの亡きがらに縋って泣く中、カーニバルは盛況を迎えていく。その後レオナルドはアントニオに別れを告げ、義勇軍へと旅立つのであった。

→感想

・レオナルド主人公にした方が良かったのでは?

ブルーレイまで買っておいてあれですけど、本当に面白い話ではないです。大野先生もパンフで「若書きらしい作品。非常にかっこつけた作品。後の洗練された柴田作品らしからぬ表現満載だし物語も性急。」というような文を並べています。一応魅力的な作品でこのかっこつけを積み重ねるとあかねさすや仮面ロマのような傑作に繋がっていくという締めくくりでしたけど、本当に今作はつまらないです。何が主題分からないのと主人公が兄弟逆だろ!という点が×。

レオナルド主人公にした方が良かったのではという印象を受けます。聡明設定のアントニオが可哀想なパメラに惹かれたのが恋愛なら微妙(ほかの取り巻き男と一緒じゃん…)だし、同情だとしたら弟に譲るなという感じなんです。そしてすぐさまアントニオはアンジェラのおままごとみたいな恋愛に楽しく興じていき、それを見ている未練がましいパメラが可哀想…惚れたもの負けとはこのこと。

レオナルドは起承転結たくさんのパートがあります。親との喧嘩~熱い友情・兄への尊敬と愛情~兄の想い人を偽りの愛で奪いながらも本当に好きになってしまう~VSオテロ・パメラの死~アントニオへの懺悔~親と和解・義勇軍へ…いや主人公!!!

かたやアントニオは親とも特に何もなく、ひたすら家にいて保守思考~好きになった人を諦めて近場の幼馴染と恋愛スタート~弟を見送る、ぐらいしかない。アンジェラと何回もすったもんだ繰り返すシーンが不要で、主題が兄弟愛ならそっちに全振りした方がいいのではないかと。あと愛のエレジーがまどかちゃん、星空さんとの違いが外見だけではわからないくらい二人とも若くて可憐で、この役自体がもっとやり手の酒場の歌手あがりっぽく演じた方が面白いのかなと思いました(パンフの過去写真では結構ビジュアルで差を出してたので)。

・最高のスパイス、オテロ&マチルド

とはいっても脇役の設定はかなり面白い。そして配役がとてつもなくナイス!!!花娘が誇る歌姫が適材適所で歌います。中でも大好きな咲乃深音ちゃんが大抜擢、オテロをけなげに追いかけ続けるマチルドを演じます。ピュアな登場人物が多い中でダークなオテロがマチルドを連れて登場…冷たいけど魅力的な悪い男。過去の女が気になってしょうがないオテロへ「あたし行くのやめようかな…」と切り出すもバッサリと突き放され、離れられないマチルド…(ケープと帽子が素敵)。チェーザレの店で抜群の歌唱力と可愛らしさで酒場の男達を籠絡していくマチルドの堂々たるソロ…!カーニバルでは楽しく歌い踊る群衆に紛れながらもオテロの指示をこなすべく暗躍するマチルド…。憲兵隊の罠に引き込む手練れ感も見せます。(統一運動に走る男達に駆け寄る踊り子の中でスカーフを持っていないのはスパイのマチルドだけなところとかすごい自然な演技です)絡んだ執着の行く先でオテロは亡くなりその亡骸に縋るマチルド。どうしようもない男ですがマチルドにとっては確かに愛してやまない人間だったと思わせてくれる…絶唱を置き土産にそっと舞台を涙の中去っていきます…ひとこちゃんもインタビューで言っていましたがオテロがパメラから受けた傷(喪失感)を今度はマチルドに負わす…まさに因果は巡る結末です。正直深音ちゃんの台詞がこんなにあってひたすら感動…どれも素晴らしく、流石花娘の実力派!!

・まとめ

フィレンツェは作品として真面目な感想を述べると主題が定まらないために何の演出や人物に重きを置いてるのか今ひとつ伝わってこなかったですね~。テンポ感は悪くないが、主人公達が穏やか過ぎて恋の炎が燃えないままに元来のロマンスの在処が互いへの思いやりに即変容してしまったのが盛り上がりの欠如へ。ただ、それを補ってオテロ・マチルドカップルが面白い役割で絡んでくるからギリギリ成り立ってたかな。柴田先生はこの後たくさんの激情型の作品を残しますからそのドラフトみたいな作品だと思うと成程!と思う箇所もあり、興味深かった!全ツならではの路線外の抜擢も良かったし全体的には満足。

 

 

ショー グルーヴ『Fashionable Empire

→衣装の文句や構造の平坦さは以前書いた大劇場版から然程変更はないです。なので咲乃深音ちゃんのレポに徹します。

・エンパイアレディのはくりんとした前髪に大きいバレッタのような飾りで後ろに髪を纏めてて超かわいかった!

・ラビリンスではカゲコは勿論、ダンスもキレキレ!

・スウィングの女深音ちゃんがだいやくんに突然バックハグされて全私がときめいた…

・Club MISTY、まさかの聖乃あすかと激しく踊る深音ちゃんからスタート!強すぎる!!!!!余りに良すぎて水色のキラキラ衣装がボヤけるくらい涙腺にきた、ここ、泉まいらくんとのデュエットも最高なのにダンスまで最強の深音ちゃん…

・ここから余韻で記憶がないがフィナーレのコーラス三人娘可愛すぎる

・エトワール!!!!退団公演で若草さんのも切なく素晴らしかったけど、可憐な深音ちゃんのエトも明るく澄んだお声が優しく会場に響き渡る様が本当に素敵だった…ありがとう、深音ちゃん…スチールも最高だった…

 

 

■10月 望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』

→だいもんのソロコン2回目。SPEROの時も観劇したが、その際のスタイリッシュで煌びやかな世界観ではなく、日常の中から各コンセプトに飛び出していくような設計。全体的にセットも衣装もレトロで、(新規向けというよりかは)だいもんを追いかけているファン層に合っているのかなと思う感じ。(disじゃない。これは大切なこと!)

OPはドラマさながら、ご自身と曲との歴史を振り返りながら歌うことについて深堀していく芝居パートから開始。続く#BROADWAY MELODYパートが一番良かった!シカゴからの「Luck Be a Lady」痺れた…#PLAYBACK SONGS「君は薔薇より美しい」も素晴らしい…#LIFEもすごい。

GUESTは彩凪翔くんでまさかの雪組メドレー、♪Gato Bonito!! / 宝塚歌劇団雪組公演「Gato Bonito!!」→♪シルクロード宝塚歌劇団雪組公演「シルクロード~盗賊と宝石~」でテンション爆上げ!!!これだけでも価値がある公演だった…!!!大満足!!!

一点、舞台上での早替え等を売りにしているのか後半の衣装がなんか重ね着を目的としている変なデザインだったのが一番謎だった。上の階から見ると厚みがあって綺麗に見えない。それがコンセプトにはあっているのかしら。。(でもエリザの黒いドルマンスリーブみたいなパネルドレスだけは本当に???です)

 

 

■10.11月 宙組公演TAKARAZUKA MUSICAL ROMANCE『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』

→当方これを機にLDH沼に…。HiGH&LOWって本当面白いよね。日本人皆HiGH&LOW THE WORST X観てください。前回のFWMしかり、これを機に宝塚ファンがLDHへ、LDHファンが宝塚にと異文化交流の懸け橋になったのではないかと思います!!!野口君の大劇芝居デビューでもあり、本当に衣装から装置まで素晴らしかった。全ての関係者に感謝。余談ですがHiGH&LOW THE WORST Xで主演を務める川村壱馬くんがムラに観劇にいらして絶賛してくれています!宝塚が色んなエンタメと結びついて可能性を広げてくれるのは良いことだー!

 

ファッシーノ・モストラーレ『Capricciosa(カプリチョーザ)!!』-心のままに-

→プレ退団にふさわしいすっきりしたかっこいいショー。グランカンタンテしかり今年のダイスケは落ち着いている。一部の役者の妙な行動(演出だったらごめん)を除いては出来栄えの良いショーだと思う。いろんな人や物に応用効きそう。

 

 

■10月 宙組公演(新人公演)TAKARAZUKA MUSICAL ROMANCE『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』

→配信で視聴。あのんくんとひばりちゃんの若い二人が演じることで、コブラの若い時期の話という話が受け入れやすくなっていたのを踏まえても諸々ちゃんと恋愛になっているのに感動。やはりまかたんとかのちゃんでは大人っぽくシリアス(よく言えば人として放っておけない、悪く言えば義務感)に作られているシーンも、あのんくんコブラがひばりちゃんカナにちゃんと恋に落ちてる納得感があった。りせもなるくんも落ち着いてて大役をこなしているのはえらい。ナニーロは予想通り良い出来。個人的には真白くんがMVP、彼の新人公演が早く見たい。

 

 

■11月 映画「死神遣いの事件帖 -月花奇譚-」

東映ムビステシリーズ映画鑑賞。

映画「死神遣いの事件帖 -傀儡夜曲-」、舞台「死神遣いの事件帖 -鎮魂侠曲-」は観劇済。舞台「死神遣いの事件帖 -幽明奇譚-」のみ未観劇。

・あらすじ

時は、将軍家光の治世。江戸はゾンビならぬ“腐乱人”という名の亡者たちによって混乱に陥っていた。墓場から蘇った“腐乱人”は生者の肉を求めて町民を襲い、噛まれた者は“腐乱人”に変貌するため、人々は生活の制限を余儀なくされていた。そんな中、久坂幻士郎(鈴木拡樹)と死神・十蘭(安井謙太郎)は、記憶を失った少女(清宮レイ)から自分探しを依頼される。幻士郎と十蘭は、自分の名も思い出せない少女に「ハナ」と名づけ、彼女の過去を探りはじめるが、妖術師・空真(北村諒)によって、連れ戻されてしまう。空真の目論見を打ち砕いて江戸とハナを救うべく、戦うのであった。

・感想

推しの7ORDERのリーダー安井謙太郎くん演じる死神十蘭と2.5次元界のキング鈴木拡樹演じる死神遣い久坂幻士郎のコンビが復活!ということで意気揚々と見たものの、思いのほか寂しいエンディングの切なめのストーリー。一作目の熱い進化調の変化等のギミックが珍しくなくなった分をどうカバーするのかなと思ったらヒロインのバックボーンをミステリーの軸として置く展開でした。冒頭から時折入る意味深なカット、これが結論でした。名前のない孤児の最初に目が行くところが豆や米などの食料、そして身綺麗で楽し気な子供たち、淡い恋、そのすべてがハナの出自に帰結していく様は単純ですが、一番ずしんと来る展開でした…結構地味だなと思った7ORDERのテーマ曲もここで効いてくる憎い演出…。清宮さんの飾らない演技がとても良く、最後の寂しさは彼女の素朴さが引き立てたものだと思います。安井君の妖艶さは絶好調!元カレ?に助けを求めてあしらわれる様もかわいかったですね~。

 

 

■10.12月 雪組公演 グランド・ミュージカル『蒼穹の昴

宝塚大劇場で一回観劇。その後、東京宝塚劇場で2回観劇、千秋楽配信も視聴。

原作未読。諸々の問題は一度置いてフラットに感想を書きます。

・良かった点

豪華絢爛・ドラマティックな展開(衣装、装置は今年最高峰)、京劇(はいりお最強!)、若手に至るまで色んな男役の見せ場の多さ、岡あすくんの使い方、フィナーレパートのかっこいいマンパオ演出、夢白ひまりのダンス(かわいい…)

・個人的に良くなかった点

娘役の出番のなさ(女官にセリフ・名前すらない)、トップ娘役の出番と衣装、恋愛的な意味で出港した後が知りたい、文秀くん知恵者エピが後半になさすぎるため急にツァイテンを叱責して作戦失敗する男になってしまう、袁世凱の急な離反の理由(原作関連エピがカットされすぎ)

・感想

今となってはあまり多くを語ることもできなくなりましたが、全体的にはかなり面白いし泣けます。特にそら、すわっちの最期には思わず号泣してしまいました。キーワードは「宿命」、作中で出てくるセリフに「人間の力をもってしても変えられぬ宿命などあってたまるものか」という命題があります。作中でまともに着実に自分の力で生きているように見せかけてその実最も宿命に雁字搦めに縛られていた主人公文秀。かたや宿命や運命の予言は偽りだと知りながら他人の力も借りてのし上がり、地位と名誉を手に入れた春児。良い対比でした。また、使命感に燃える順桂が、自分の持った家庭(妻子)の存在がきっかけで、生まれながらにもった一族の宿命という呪い(ツーシーの排斥)を捨てて、現れた子供を救うため爆弾の被害を最小限にとどめるところがよかったです。あれこそ宿命に勝った瞬間だと思います。そして何といってもタンストンが玲玲のために静かに自分の責務を全うしようとするところはあまりにも悲しくてやりきれません。前に求婚の際に何もできなくて持ってなくていいからただそばにいてほしいと言われたことを受け、玲玲が傍にいます!と叫ぶところ、あれは本当に…。全体的に辛い最後の中で唯一の救いはツァイテンの幻影が文秀に「友よ」と呼びかけるところですね、ツーシーがツァイテンに友すらいないと嘆いていたところが回収。

今回104.105期ぐらいまでにいたるまで、男役はものすごい見せ場が各人に用意されていてすごくやりがいあったと思います。かたや娘役でセリフがあったのは夢白・ひまり・はばまい・退団者ぐらい。あとは群衆芝居以外でセリフがあった人を除けば名前すらない役を上級生すら割り当てられ、CHや夢介であれほど娘役が活躍したことを思い出すとこれは全くの異常配分、エリザベート並みの役のなさ。作品の出来は悪くなかっただけに原作もある難しさを感じながらも専科大量投入を踏まえ、役者のモチベーションに関わりそうでびっくり。とにかく諸所ハラスメント問題を乗り越えたジェンヌと最後まで温かく柔和で娘役芸を磨き続けた希和ちゃんに拍手です。サヨナラショーも素晴らしかった。希和ちゃんの柔軟な背から繰り広げられる素敵なダンスと謙虚で幸せが溢れる目元には随分と楽しませていただきました…咲きわコンビありがとう…。

 

 

■る・ひま 【る祭】『明治座でどうな・る家康』

→今年もありがとうございます。毎年お世話になっている明治座年末の風物詩。MVPは間違いなく雄也くんです。連続でんぐり返しして泣き出したところ忘れません。シータのルッキズムの鋭い批評も最高でした。来年も楽しみにしています。(詳細書くと本家にばれるから書けん)