観劇ブログ(雑記ちゃん)

かなり個人の見解です!

2022年後半の観劇を振り返る(2022/10-12)

年末までに観た公演の感想をつらつらとメモです。

 

 

 

■10月 花組公演ミュージカル・ロマンス『フィレンツェに燃える』

→柴田先生の若い時にお書きになられた1975年の愛の二面性がテーマの作品を47年ぶりに再演。大野先生がリバイスしたものの、熱量的にご希望ではなさそう。。

・ざっくりあらすじ

フィレンツェの貴族兄弟が遠縁の亡き伯爵の後妻パメラに出会い、正反対な性格の兄弟のうち、聡明でノーブルな兄のアントニオがパメラに惹かれ、パメラもまた彼を愛するようになる。奔放で自由な弟レオナルドは兄を思うあまり二人の仲を引き裂くべく、パメラを奪うことにする。パメラもレオナルドの思惑に乗り、アントニオの名誉を守るために身を引くが、昔の恋人オテロと今の恋人のマチルドが密かにフィレンツェにやってくる。アントニオは幼馴染のアンジェラと良い感じになり、レオナルドは国家統一運動へ傾倒していく。パメラは未練があって中々立去れないところ、オテロが襲い掛かる。いつの間にかパメラを本当に愛するようになっていたレオナルドが守ろうとするが、絶命間際のオテロは引き金を引き、オテロとパメラは命を落とす。悲しい顛末にマチルドがオテロの亡きがらに縋って泣く中、カーニバルは盛況を迎えていく。その後レオナルドはアントニオに別れを告げ、義勇軍へと旅立つのであった。

→感想

・レオナルド主人公にした方が良かったのでは?

ブルーレイまで買っておいてあれですけど、本当に面白い話ではないです。大野先生もパンフで「若書きらしい作品。非常にかっこつけた作品。後の洗練された柴田作品らしからぬ表現満載だし物語も性急。」というような文を並べています。一応魅力的な作品でこのかっこつけを積み重ねるとあかねさすや仮面ロマのような傑作に繋がっていくという締めくくりでしたけど、本当に今作はつまらないです。何が主題分からないのと主人公が兄弟逆だろ!という点が×。

レオナルド主人公にした方が良かったのではという印象を受けます。聡明設定のアントニオが可哀想なパメラに惹かれたのが恋愛なら微妙(ほかの取り巻き男と一緒じゃん…)だし、同情だとしたら弟に譲るなという感じなんです。そしてすぐさまアントニオはアンジェラのおままごとみたいな恋愛に楽しく興じていき、それを見ている未練がましいパメラが可哀想…惚れたもの負けとはこのこと。

レオナルドは起承転結たくさんのパートがあります。親との喧嘩~熱い友情・兄への尊敬と愛情~兄の想い人を偽りの愛で奪いながらも本当に好きになってしまう~VSオテロ・パメラの死~アントニオへの懺悔~親と和解・義勇軍へ…いや主人公!!!

かたやアントニオは親とも特に何もなく、ひたすら家にいて保守思考~好きになった人を諦めて近場の幼馴染と恋愛スタート~弟を見送る、ぐらいしかない。アンジェラと何回もすったもんだ繰り返すシーンが不要で、主題が兄弟愛ならそっちに全振りした方がいいのではないかと。あと愛のエレジーがまどかちゃん、星空さんとの違いが外見だけではわからないくらい二人とも若くて可憐で、この役自体がもっとやり手の酒場の歌手あがりっぽく演じた方が面白いのかなと思いました(パンフの過去写真では結構ビジュアルで差を出してたので)。

・最高のスパイス、オテロ&マチルド

とはいっても脇役の設定はかなり面白い。そして配役がとてつもなくナイス!!!花娘が誇る歌姫が適材適所で歌います。中でも大好きな咲乃深音ちゃんが大抜擢、オテロをけなげに追いかけ続けるマチルドを演じます。ピュアな登場人物が多い中でダークなオテロがマチルドを連れて登場…冷たいけど魅力的な悪い男。過去の女が気になってしょうがないオテロへ「あたし行くのやめようかな…」と切り出すもバッサリと突き放され、離れられないマチルド…(ケープと帽子が素敵)。チェーザレの店で抜群の歌唱力と可愛らしさで酒場の男達を籠絡していくマチルドの堂々たるソロ…!カーニバルでは楽しく歌い踊る群衆に紛れながらもオテロの指示をこなすべく暗躍するマチルド…。憲兵隊の罠に引き込む手練れ感も見せます。(統一運動に走る男達に駆け寄る踊り子の中でスカーフを持っていないのはスパイのマチルドだけなところとかすごい自然な演技です)絡んだ執着の行く先でオテロは亡くなりその亡骸に縋るマチルド。どうしようもない男ですがマチルドにとっては確かに愛してやまない人間だったと思わせてくれる…絶唱を置き土産にそっと舞台を涙の中去っていきます…ひとこちゃんもインタビューで言っていましたがオテロがパメラから受けた傷(喪失感)を今度はマチルドに負わす…まさに因果は巡る結末です。正直深音ちゃんの台詞がこんなにあってひたすら感動…どれも素晴らしく、流石花娘の実力派!!

・まとめ

フィレンツェは作品として真面目な感想を述べると主題が定まらないために何の演出や人物に重きを置いてるのか今ひとつ伝わってこなかったですね~。テンポ感は悪くないが、主人公達が穏やか過ぎて恋の炎が燃えないままに元来のロマンスの在処が互いへの思いやりに即変容してしまったのが盛り上がりの欠如へ。ただ、それを補ってオテロ・マチルドカップルが面白い役割で絡んでくるからギリギリ成り立ってたかな。柴田先生はこの後たくさんの激情型の作品を残しますからそのドラフトみたいな作品だと思うと成程!と思う箇所もあり、興味深かった!全ツならではの路線外の抜擢も良かったし全体的には満足。

 

 

ショー グルーヴ『Fashionable Empire

→衣装の文句や構造の平坦さは以前書いた大劇場版から然程変更はないです。なので咲乃深音ちゃんのレポに徹します。

・エンパイアレディのはくりんとした前髪に大きいバレッタのような飾りで後ろに髪を纏めてて超かわいかった!

・ラビリンスではカゲコは勿論、ダンスもキレキレ!

・スウィングの女深音ちゃんがだいやくんに突然バックハグされて全私がときめいた…

・Club MISTY、まさかの聖乃あすかと激しく踊る深音ちゃんからスタート!強すぎる!!!!!余りに良すぎて水色のキラキラ衣装がボヤけるくらい涙腺にきた、ここ、泉まいらくんとのデュエットも最高なのにダンスまで最強の深音ちゃん…

・ここから余韻で記憶がないがフィナーレのコーラス三人娘可愛すぎる

・エトワール!!!!退団公演で若草さんのも切なく素晴らしかったけど、可憐な深音ちゃんのエトも明るく澄んだお声が優しく会場に響き渡る様が本当に素敵だった…ありがとう、深音ちゃん…スチールも最高だった…

 

 

■10月 望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』

→だいもんのソロコン2回目。SPEROの時も観劇したが、その際のスタイリッシュで煌びやかな世界観ではなく、日常の中から各コンセプトに飛び出していくような設計。全体的にセットも衣装もレトロで、(新規向けというよりかは)だいもんを追いかけているファン層に合っているのかなと思う感じ。(disじゃない。これは大切なこと!)

OPはドラマさながら、ご自身と曲との歴史を振り返りながら歌うことについて深堀していく芝居パートから開始。続く#BROADWAY MELODYパートが一番良かった!シカゴからの「Luck Be a Lady」痺れた…#PLAYBACK SONGS「君は薔薇より美しい」も素晴らしい…#LIFEもすごい。

GUESTは彩凪翔くんでまさかの雪組メドレー、♪Gato Bonito!! / 宝塚歌劇団雪組公演「Gato Bonito!!」→♪シルクロード宝塚歌劇団雪組公演「シルクロード~盗賊と宝石~」でテンション爆上げ!!!これだけでも価値がある公演だった…!!!大満足!!!

一点、舞台上での早替え等を売りにしているのか後半の衣装がなんか重ね着を目的としている変なデザインだったのが一番謎だった。上の階から見ると厚みがあって綺麗に見えない。それがコンセプトにはあっているのかしら。。(でもエリザの黒いドルマンスリーブみたいなパネルドレスだけは本当に???です)

 

 

■10.11月 宙組公演TAKARAZUKA MUSICAL ROMANCE『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』

→当方これを機にLDH沼に…。HiGH&LOWって本当面白いよね。日本人皆HiGH&LOW THE WORST X観てください。前回のFWMしかり、これを機に宝塚ファンがLDHへ、LDHファンが宝塚にと異文化交流の懸け橋になったのではないかと思います!!!野口君の大劇芝居デビューでもあり、本当に衣装から装置まで素晴らしかった。全ての関係者に感謝。余談ですがHiGH&LOW THE WORST Xで主演を務める川村壱馬くんがムラに観劇にいらして絶賛してくれています!宝塚が色んなエンタメと結びついて可能性を広げてくれるのは良いことだー!

 

ファッシーノ・モストラーレ『Capricciosa(カプリチョーザ)!!』-心のままに-

→プレ退団にふさわしいすっきりしたかっこいいショー。グランカンタンテしかり今年のダイスケは落ち着いている。一部の役者の妙な行動(演出だったらごめん)を除いては出来栄えの良いショーだと思う。いろんな人や物に応用効きそう。

 

 

■10月 宙組公演(新人公演)TAKARAZUKA MUSICAL ROMANCE『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』

→配信で視聴。あのんくんとひばりちゃんの若い二人が演じることで、コブラの若い時期の話という話が受け入れやすくなっていたのを踏まえても諸々ちゃんと恋愛になっているのに感動。やはりまかたんとかのちゃんでは大人っぽくシリアス(よく言えば人として放っておけない、悪く言えば義務感)に作られているシーンも、あのんくんコブラがひばりちゃんカナにちゃんと恋に落ちてる納得感があった。りせもなるくんも落ち着いてて大役をこなしているのはえらい。ナニーロは予想通り良い出来。個人的には真白くんがMVP、彼の新人公演が早く見たい。

 

 

■11月 映画「死神遣いの事件帖 -月花奇譚-」

東映ムビステシリーズ映画鑑賞。

映画「死神遣いの事件帖 -傀儡夜曲-」、舞台「死神遣いの事件帖 -鎮魂侠曲-」は観劇済。舞台「死神遣いの事件帖 -幽明奇譚-」のみ未観劇。

・あらすじ

時は、将軍家光の治世。江戸はゾンビならぬ“腐乱人”という名の亡者たちによって混乱に陥っていた。墓場から蘇った“腐乱人”は生者の肉を求めて町民を襲い、噛まれた者は“腐乱人”に変貌するため、人々は生活の制限を余儀なくされていた。そんな中、久坂幻士郎(鈴木拡樹)と死神・十蘭(安井謙太郎)は、記憶を失った少女(清宮レイ)から自分探しを依頼される。幻士郎と十蘭は、自分の名も思い出せない少女に「ハナ」と名づけ、彼女の過去を探りはじめるが、妖術師・空真(北村諒)によって、連れ戻されてしまう。空真の目論見を打ち砕いて江戸とハナを救うべく、戦うのであった。

・感想

推しの7ORDERのリーダー安井謙太郎くん演じる死神十蘭と2.5次元界のキング鈴木拡樹演じる死神遣い久坂幻士郎のコンビが復活!ということで意気揚々と見たものの、思いのほか寂しいエンディングの切なめのストーリー。一作目の熱い進化調の変化等のギミックが珍しくなくなった分をどうカバーするのかなと思ったらヒロインのバックボーンをミステリーの軸として置く展開でした。冒頭から時折入る意味深なカット、これが結論でした。名前のない孤児の最初に目が行くところが豆や米などの食料、そして身綺麗で楽し気な子供たち、淡い恋、そのすべてがハナの出自に帰結していく様は単純ですが、一番ずしんと来る展開でした…結構地味だなと思った7ORDERのテーマ曲もここで効いてくる憎い演出…。清宮さんの飾らない演技がとても良く、最後の寂しさは彼女の素朴さが引き立てたものだと思います。安井君の妖艶さは絶好調!元カレ?に助けを求めてあしらわれる様もかわいかったですね~。

 

 

■10.12月 雪組公演 グランド・ミュージカル『蒼穹の昴

宝塚大劇場で一回観劇。その後、東京宝塚劇場で2回観劇、千秋楽配信も視聴。

原作未読。諸々の問題は一度置いてフラットに感想を書きます。

・良かった点

豪華絢爛・ドラマティックな展開(衣装、装置は今年最高峰)、京劇(はいりお最強!)、若手に至るまで色んな男役の見せ場の多さ、岡あすくんの使い方、フィナーレパートのかっこいいマンパオ演出、夢白ひまりのダンス(かわいい…)

・個人的に良くなかった点

娘役の出番のなさ(女官にセリフ・名前すらない)、トップ娘役の出番と衣装、恋愛的な意味で出港した後が知りたい、文秀くん知恵者エピが後半になさすぎるため急にツァイテンを叱責して作戦失敗する男になってしまう、袁世凱の急な離反の理由(原作関連エピがカットされすぎ)

・感想

今となってはあまり多くを語ることもできなくなりましたが、全体的にはかなり面白いし泣けます。特にそら、すわっちの最期には思わず号泣してしまいました。キーワードは「宿命」、作中で出てくるセリフに「人間の力をもってしても変えられぬ宿命などあってたまるものか」という命題があります。作中でまともに着実に自分の力で生きているように見せかけてその実最も宿命に雁字搦めに縛られていた主人公文秀。かたや宿命や運命の予言は偽りだと知りながら他人の力も借りてのし上がり、地位と名誉を手に入れた春児。良い対比でした。また、使命感に燃える順桂が、自分の持った家庭(妻子)の存在がきっかけで、生まれながらにもった一族の宿命という呪い(ツーシーの排斥)を捨てて、現れた子供を救うため爆弾の被害を最小限にとどめるところがよかったです。あれこそ宿命に勝った瞬間だと思います。そして何といってもタンストンが玲玲のために静かに自分の責務を全うしようとするところはあまりにも悲しくてやりきれません。前に求婚の際に何もできなくて持ってなくていいからただそばにいてほしいと言われたことを受け、玲玲が傍にいます!と叫ぶところ、あれは本当に…。全体的に辛い最後の中で唯一の救いはツァイテンの幻影が文秀に「友よ」と呼びかけるところですね、ツーシーがツァイテンに友すらいないと嘆いていたところが回収。

今回104.105期ぐらいまでにいたるまで、男役はものすごい見せ場が各人に用意されていてすごくやりがいあったと思います。かたや娘役でセリフがあったのは夢白・ひまり・はばまい・退団者ぐらい。あとは群衆芝居以外でセリフがあった人を除けば名前すらない役を上級生すら割り当てられ、CHや夢介であれほど娘役が活躍したことを思い出すとこれは全くの異常配分、エリザベート並みの役のなさ。作品の出来は悪くなかっただけに原作もある難しさを感じながらも専科大量投入を踏まえ、役者のモチベーションに関わりそうでびっくり。とにかく諸所ハラスメント問題を乗り越えたジェンヌと最後まで温かく柔和で娘役芸を磨き続けた希和ちゃんに拍手です。サヨナラショーも素晴らしかった。希和ちゃんの柔軟な背から繰り広げられる素敵なダンスと謙虚で幸せが溢れる目元には随分と楽しませていただきました…咲きわコンビありがとう…。

 

 

■る・ひま 【る祭】『明治座でどうな・る家康』

→今年もありがとうございます。毎年お世話になっている明治座年末の風物詩。MVPは間違いなく雄也くんです。連続でんぐり返しして泣き出したところ忘れません。シータのルッキズムの鋭い批評も最高でした。来年も楽しみにしています。(詳細書くと本家にばれるから書けん)